作品に対する思い

作品についての思い

1) 平成10年(1998年)日展初入選 題名(銀河)

丸い形に上の方は貝を星空の様に蒔き、下の方は夕焼けの自然の様子を作品にしました。
蓋物で中は朱色で初めて日展の研究会で思いを発表する等大変でした。まさか入選するとは思っていませんでした。
日展に入選する事はとても難しいと聞いていました。入選できてとても嬉しく思いました。
これで自分が日展作家になった事が自分に対する道が開けた、今から頑張ろうと思いました。

2)平成12年(2000年)日本新工芸展 NHK会長賞 (黎明)

この賞は地方から集まった審査員が投票して満票の数が出た作品で九州で初めての事と言われました。
満票が出ることはまずないと言われとても嬉しく思いました。会場に高円宮殿下が私の作品をしゃがんで見られている写真が送られてきました。
とても感激しました。北九州美術館に巡回で来てポスターに大きく掲載され良い結果を出す事になりました。

3) 平成13年(2001年) 福岡県展 知事賞

工芸の中で一人だけの賞です。中々もらえない賞を頂きました。この作品は今までにない模様の付け方で、自由に思った事を気持ちにのせ表現して塗った作品です。

4)平成16年 日本新工芸展 日本新工芸賞

この作品はハウステンボスの展望台から海を見た風景になっています。夕焼けと潮目を描き、自然の雄大な風景を表現した作品です。
この作品は巡回して、名古屋の出版社から電話があり中学の教科書、造形と美術に載せたいと依頼があり掲載される事になりました。

5) 平成19年 一級家具製作技能士取得

大川で家具製作技能士の試験があるから受けないかと話がありました。資格があった方がいいと思い頑張って勉強しました。
仲間も一緒になって試験に出る作業を、時間内に出来る様に練習をして合格しました。
実技と筆記試験があり、私は目が悪いので帽子にルーペを付けて見ましたが、文章がずれて見えたりして大変でした。

6)平成28年(2016年)日本新工芸展 日本新工芸会員賞(夢と未来)

会員であっても中々会員賞を頂く事はまず難しいです。全国で数人です。会員の中には頑張ってももらえず辞めていく人も多くいます。
それが普通です。この賞をもらう事は、日展で特選をもらう位置の近くに来ている事にもなります。
この作品は蓋物で上の部分は宇宙を表し、貝で天の川を表現し、下の方は夕焼けを描いて自然の風景を表しています。

7)令和3年(2021年)日本新工芸展 日本新工芸会員賞(自然は朱色)

2回目の日本新工芸会員賞です。これは形にこだわり、作るのにかなり苦労があり最高に時間をかけて形を作りました。
頭で考えてもそれに向かわないと作品になっていきません。すれば頭に浮かんで考えが出てくる気持ちが強くあれば出来る、
それが大変であるほど夢に向かって燃える漆の色が心に入り、作品が出来上がります。

自分に合った仕事として家具職人を選びました。やはり伝統工芸は職人として強く惹かれるものがありました。そこで漆に出会いました。乾漆を独学で習得し漆の美しさで、自然の美しさを表現しようと一層のめりこむようになります。
夕焼けの朱色、雲の切れ目から黄金に光る日差しが射し込んでくる風景。それを作品にしようと思って試行錯誤。ていねいに教えてもらえるような時代ではありませんでした。人とまねをしているだけでは思うような表現は描けませんでした。

漆は何種類もあってそれぞれの特徴を習得することではじめて作品と向き合うことができます。漆は木の樹液で、形にするには高度な技法を身に付けないと物はできないのです。  
ヘラを使うには10年ほどの期間、勉強しないと思う様な作品になりませんでした。それに刷毛も使用するには3年はかかります。

夕焼けを表現するのに天空の球面を形どりそこに自然に近い色彩を、思いの通りに再現するためにあらゆるやり方を考えて、自分特有のやり方で試行錯誤して常に独自でやり方を変えて作品に向き合い続けます。
作品を仕上げるには1年から2年ほどかかります。特に形を作るのはものすごい期間がかかります。まず考える事はデザインをおこし決めたなら、本体と同じ形を作り麻布を漆と米のりを混ぜて張ります。地粉、錆び付け等をヘラを使って何回も繰り返し形を仕上げます。蓋物はまた蓋と中味に切り分けて、中の方に立ち上がりを付けないと蓋に収まる事はできません。蓋の中で立ち上がりは作り下に移す、そうして蓋は収まります。そうした事をして今度は漆の色で描き、刷毛も10本位用意して塗ります。

早朝から用意して塗り終わるころにはとっくに日が暮れています。塗りだけでも1回でそんなに時間がかかります。それを何工程でも塗ったら乾かし水研ぎし、内側・裏・外側・模様のついた所を塗ります。模様の所が1番大変な場所で、1番力を入れる所になっています。塗りといっても刷毛が汚れるので、汚れて漆の色が汚くならない様に気を使います。雨や小雨が降ると色彩が悪く、乾かさないと塗る事も出来なくなります。温度と湿度を調整して乾かして作品に仕上げます。ほぼ毎日休みなしでやらないと出来ません。根気と時間が必要なのです。

もう何十年も毎日乾漆作品の制作し、家具も製作しています。どちらかが片手間になるのではなく、どちらも本業です。作品作りと家具づくり、2つの事を常にしないとどちらも出来上がりません。乾漆作品は夢を形にします。そこには細やかで新しい技術を必要とします。新しい技術は夢ある家具を育みます。家具づくりはさらに技術を進化させ、乾漆作品を高みへと導いてくれます。私にとっての理想の物作り。切り離す事はできません。

「乾漆」作品とは

「乾漆」とは、漆塗りの技法の一つです。漆器との違いは、木地の形にとらわれず、自由に形を創り出すことができることです。費用と時間、手間がかかるので、現代ではあまり使われなくなっています。
奈良時代、多くの仏像や伎楽面が漆を主な材料とした乾漆技法で製作されています。東大寺の不空羂索観音や興福寺の阿修羅像、唐招提寺の鑑真像など、奈良時代には、多くの仏像や伎楽面が乾漆技法で製作されました。


⬛︎「乾漆」の特徴/費用がかかる

乾漆は、大量に漆を使用します。漆が高価だからと言って漆の量を減らして制作すると接着力が弱くなり、経年でヒビやワレの原因になります。仕上がった時は完全でも経年で良し悪しが出るので作品の状態を見極め贅沢に漆を使って制作します。

⬛︎「乾漆」の特徴/時間がかかる

材料の準備、手作業での制作、漆の乾燥、たっぷりと時間をかけて作り上げることが成功の秘訣と言われています。作業工程を短縮して制作すると仕上がりに違いが出るので制作時間がかかるのです。

⬛︎「乾漆」の特徴/世界に一つしかない高級品

木地の形に関係なく形が作れるので様々な表現が可能で繊細で優美な作品が作れます。だからこそ作り手の感性が作品の出来を左右します。漆本来の特性を知ったうえで乾漆に合うデザインを考案し、漆の美しさを最大限に表現する技術が重要です。人の手による微妙な表現が可能な代わりに、同じものを再現することはできず量産できません。「乾漆」の作品は全ての世界にひとつだけのもので、漆と時間をふんだんにかけた高級品なのです。


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